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6/17(日) 芸術家のくすり箱 ヘルスケアセミナー vol.7 レポ

2012/6/17(日) 芸術家のくすり箱 ヘルスケアセミナー vol.7 @芸能花伝舎

今年で7回目を迎えた『芸術家のくすり箱 ヘルスケアセミナー』。

もはやお馴染み、と言っても大袈裟な話には感じられなくなってきていて、第一回目からずっと参加し続けてきている自分にとってはとても嬉しく思っております。

そんなこんなで、今年も自分の受けたプログラムについて、自分なりに感じたことをつらつらと綴りつつレポートしてゆこうかと。


●10:50~11:15 健康診断

今年は視力がガクンと落ちていて、右目に至っては初めて1.0を切ってしまった、、、
ただ、ここ2~3年、検査の時に出た数字(両目ともずっと最高の1.5)と実際の感覚には随分とズレを感じてきていたので、いつかそれが数字に表れてくるだろうなということは薄々感じていたことではあったのだけれども、やっぱり実際にこうして数値を突きつけられると少なからずショックは受けてしまうなというのが正直なところ。

しかしまあ、視力と視る力というのは必ずしもイコールで結ばれているものではないので、数字を妄信し過ぎるのではなく、自らの感覚と、毎回の診断の際の数字の変遷と、日頃の自らの行動とを振り返り、照らし合わせてみる中で然るべき対策を探ってみることが大切なのかなと思う。
結局は、日頃の生活の積み重ねによって生まれた変化なのだから、生活態度から直してゆかない限りは改善など不可能なのだと、そんな風に思うので。


そして、今回ちょっと気になったことがありまして、聴力検査の際なのですが、周りの物音が物凄く邪魔で全然集中して臨めませんでした、、、また、一部の検査の前の説明も少々雑に感じてしまいました、、、

何故なんでしょうか、これまではこんなことを感じることはほとんどなかったのですれども、、、

ただ、どのような事情があるにせよ、こういう些細なところでマイナスイメージを持たれてしまうことはとても勿体ないことでもあるし、ましてやこのセミナーの目玉プログラムであるのだから、今一度、そのあり方を見直してみる時期にきているのかもしれないなと、参加者としての実感としては思いました。

や、もしかしたら自分の時だけたまたまそうだったのかもしれません。
が、初期の頃から参加し続けているからこそ感じる違和感というものもあるし、そういう一見些細に見えるようなことから大きく崩れてしまうことというのも結構多いと思います。
なので他の参加者からの意見なども集めて実際のところがどうであるのかを探りつつ、小火のうちに何かしらの対策なりは立てておいてほしいなと、そんなことを自分としては思っております。


●12:00~ 骨密度測定

昨年から数値的にはほとんど変動はなし。
が、変動はないといっても、元々の数字があまりよろしくないので(一般平均の90%前後)、自らの不摂生が解消されていないことの証明でもあるともいえるのかも、、、

いつか、ではなく、早速、自らの生活習慣について見直し、行動してゆかねばなと思います。。。


●13:15~14:45 歯科医師に聞く芸術家の口腔治療(審美・滑舌について)
≪講師≫猪原 健 先生

講師の猪原先生は、これまでも個別相談でこのセミナーへは関わられていたので、いつかプログラムとして組まれたらいいなと個人的に思っておりました。

というのも、自分も過去に歯の矯正の経験があり、歯に関わることでの悩みを少なからず抱えてきた人間ではあるので、自らの活動を続けてゆく上で“歯”というものとどのようにして向き合ってゆくべきなのか、探ってみたかったためです。
また、自分が取り組んでいる発声指導にも密接に関わってくる要素だと思っているので、「歯」というこれまでの自分にはなかったような視点からの考え方へと繋げてゆけるのではないか、とも考えておりました。

そんな思いがまさに今回こうして実現した訳なのですが、実際にこの講座を受けてみて面白いなと思ったのは、かつて言語聴覚士の方のお話を伺った時に聞いた話と通じるなと感じられる部分がとても多かったことです(但し重点を置いているポイントは少し違うのだけれども)。

まあ、人の身体を扱うことである以上は重なる部分も多いのは当然のことだし、なのでさほど不思議なことだとは思わなかったのだけれども、しかしそれだけに、そういった重なっているポイントについてよくよく調べてみることはとても重要なことだと思います。

歯科医師から見た芸術家、言語聴覚士から見た芸術家、その両者にとって、、いや、きっとそれ以外の分野の専門家の方から見た芸術家もそこに加えてみた上で、何が重なっているのか、重なっていないのか、というところを探ってみることで、もしかしたら芸術家にとってのヘルスマネジメントとは一体どういうことなのかが浮かび上がってくるのかもしれません。

今回の講座では、そういったことに気付けたことが一番の収穫であったなと、そんな風に思いました。


また、歯に起こる問題が年齢によってどのように変遷してゆくのか、ということや、その予防、或いはケアのためにどのように自らはアクションしてゆけばよいのか、という点についてを具体的にアドバイスして頂けたのが、とても参考になりました。

まだまだ全然低いであろう芸術家にとっての歯のケアやメンテナンスに対する意識。
これを機に、調べ考え、実際に行動に移してゆくようにして、少しずつでもいいからその意識を高めてゆけたらなと思っております。個人としても、業界全体としても。


【備忘録・印象的な言葉】

「スポーツ選手の場合、野球などのように力むことの多い競技の選手であれば歯にこだわる選手も多いが、それも一部の話で、大抵の競技の選手はオリンピッククラスであっても一般の人と歯に対する意識に差はなかった」

「トロントの芸術家のための医療センターは、診療室もリラックスできるような環境であったり、院内のスタジオもカメラがセットされていてビデオを見ながらフィードバックを行えるような環境が整っていたりと日本に比べ非常に進んでいるのだが、しかし、それでも歯科医師部門はない」

「歯科医師はほとんどの場合、芸術家の事情などを分かってはいない。だからこそ、受診の際には自らの事情と要望はきちんと伝える」
「若い世代(だいたい30歳くらいまで)は抜歯の原因は虫歯中心。それ以降は歯周病中心。従って、その変化に応じケアも変えてゆく必要がある」

「CMなどで言われている“歯周ポケット”の洗浄だが、通常の歯磨きではまず不可能」→「専門家による定期的なメンテナンスが必要」

「歯科医師を選ぶ際には、歯科衛生士がきちんと担当制になっている歯科医院を選ぶようにする」
「歯科医師も人間なので、度々約束をすっぽかしたりすれば治療に対する気合の入り方は変わってきてしまう」→「お互いの信頼関係を築いてゆくことが大切」

「信頼できる歯科医の先生と歯科衛生士さんを“近所”に見つけ、継続的にメンテナンスを行えるようにすることがとても重要なこと」


●14:45~16:30 アレクサンダーテクニーク
≪講師≫石坪 佐季子 先生

石坪さんのAT(アレクサンダーテクニーク)レッスンは、実はちょうど3年前に受けたことがあって、しかもその時に得たものは、今の自分にとって掛け替えのない財産となっています。
過去に石坪さん以外の方のATレッスンもいくつか受けたことがあるのですが、自分には石坪さんのやり方考え方が非常にマッチングするような実感を強く持っております。
なので、今回のセミナーでまた参加できるチャンスを得られたことが非常に嬉しく、この日組まれた全プログラムの中で真っ先に申し込みを決断したのがこの石坪さんによるATでした。

その判断はやはり間違っていなかったようで、今回もとても収穫の多い、素敵な時間を送ることができたなと思っております。

今回は基本的に、「ハンズオンワーク」という教師が手を使って生徒の感覚をサポートする、というワークが中心で、ワーク自体はマンツーマンなので、一人ひとりのワークの様子を他の参加者が見る、という構図で順々に行ってゆく、という進行でした。

なので個々人が実際にワークを体験できた時間そのものは短いものでしたが、しかしそれでも得たものは非常に多かったなという実感があります。
また、以前受けた時とは違った目線で、つまりワークを受けている人のことを外側から見てその変化を目の当たりにしてゆく、という時間の過ごし方をできたことは、それはそれで発見に満ちた貴重な財産となれたと思っております。

なにせ自分にとって石坪さんの言葉は、まるで乾いた石の上に雨が降ってきた時のように身体の隅々にまで染み込んでくる感じがしてくるような感覚で、とても馴染むのです。

特に最初の方で仰っていた、

「ハンズオンワークによって身体が変化したとして、変わる前が悪かった訳じゃない。自らの身体のバリエーションが増えただけ」

という言葉は、こういう言い方は不遜かもしれませんが、指導者としてのあるべき姿を見たような気がしました。
ただ、おそらくああいった言葉が自然に出てくるところが、石坪さんの中でのAT観であり、指導者観であるのかなと思いますし、だからこそ、近い考え方を持っている自分も、何かしら響き合うものを感じるのかもしれません。

今回も実に多くの学びを与えて下さった石坪さんに、心より感謝致します。

それだけに今回の経験を、自らの活動へとどう活かしてゆくのか?

そんなことを考えつつ、それと同時に、どうにかして石坪さんのレッスンを継続的に受けられるような道筋がないか、探ってゆこうかなと思ったりもしております。
やはりこういうATのようなレッスンは、継続的に受けてこそ見えてくるものが沢山あると思うので、単発で受けて「ああ、楽しかった」で済ませてしまうのはあまりにも勿体ないことだと思うのです。

そもそもこのセミナーそのものの狙いとしても、このセミナー内で大きな成果を上げることが目的なのではなく、あくまでもこのセミナーは出会いの場であり、それによってそれぞれのレッスンの敷居を低くしてゆくことが目的なので、ちゃんとこれからへと繋げてゆこうとしてゆく姿勢を持つことが重要だと思ってます。

ただ実は、そんなことを考えていた自分へ、まさかの石坪さん自身からとても嬉しいお話を頂いたので、このチャンスは逃さぬようしっかり今後に繋げてゆきたいなと、そんなことを考えている次第です。


■16:45~18:15 舞台のためのヘルスマネジメント
≪講師≫水村 真由美 先生

昨年のセミナーでも同講座は受けたのだが、水村先生のお話は具体的な事例を交えてのとても分かり易い内容であるため、再び受けてみたいなと思い、受講を決めました。
そしてその選択は間違っていなかったと思います。
昨年同様どころか昨年以上に充実した、時間いっぱいぎりぎりまで使ってとにかく詰め込めるだけ詰め込んだとても盛り沢山な内容で、今年も大満足でした。

しかしつくづく思うのは、ここで語られていることというのは本来ならば身体を資本とする分野に属する人間であるのならばごくごく当たり前に守られて然るべきことばかりだということ。
にも関わらず、その当たり前のことをしっかり守れているであろう芸術家は非常に稀な存在であるというのが現実であったりするところに、この芸術家のヘルスマネジメントの困難さが表れているのだと思います。

しかしだからといって「現実問題として成立させることは非常に困難であるから仕方ない」で済ませてしまっていい話ではありません。
水村先生の講座がいいなと思うのは、ちゃんとそこのところの部分までフォローして「ではどのような対策が考えられるのか」という点にまでしっかり言及しているところです。

業界全体に横たわっている問題がなんなのか、それが変えられるものなのか、変えられるのだとすればどのようなアクションを起こしてゆくことが必要なのか。
そういったことを考えてゆくこともとても大切なことですが、しかし、環境を変えてゆくには時間がかかるし、変わる前に自分の身体が駄目になってしまったらそれこそ元も子もなくなってしまいます。

どんなに環境が整っていない状態であろうとも、どんなに怪我のリスクが大きな環境での活動を強いられていようとも、そんな環境下でやる以外に手がない以上はその現実と付き合ってゆかねばなりません。
怪我をしてから「こんな環境のせいで、、、」といくら周囲の環境を呪ったところで何の解決にもならないのです。悲しいことだけれども。

環境が恵まれていないことが、自らの身体を守るための努力を怠っていい理由にはならないのです。
むしろ恵まれてないからこそ、より突き詰めて考えてゆかねばならないはず。

自らの身を守りながら、少しずつ、周囲の環境も改善させてゆけるようにしてゆくよう働きかけてゆく。
そんな発想が、この日本という国で身体を駆使した芸術活動を続けてゆくにあたってはとても必要なことなのだろうと思います。

そしてそのためのひとつの手段として、身体のことに精通した専門家の味方(理解者)を増やしてゆくことが重要になってくるのではないか、、、そんなことをつくづく思わされた講座でした。


【備忘録・印象的な言葉】

「スポーツ科学の場合は、『オリンピックなどの大きな大会での勝利』という目標設定が明確に定められるため、長期的なビジョンでのトレーニングの計画を立てることができる」
「しかし芸術の場合は、評価の基準そのものが明確ではなく、何を目標として定めるべきかが絞りにくく、そうなると目先の公演にばかり意識がいってしまうため、なかなか長期的なビジョンでトレーニングの計画を立てるという発想に至りにくい」

「難しいのは、日本の場合スポーツ経験は一般的だが芸術経験は希少だということ。従って周囲の理解をすんなりとは得にくい。如何にして医療関係者やトレーナー等の専門家の味方(理解者)を増やせるかが芸術家のヘルスマネジメントには重要」

「環境を変えるのはとても難しい。ならば如何にして自らを壊さずにやれるか。自分で自分の身体を管理する意識を向上させることが重要」
「ある程度の怪我の要因は予測可能。その中で変えられる要因は何か、変えられない要因は何か。そこを明確にしてゆくことで如何にして対応してゆくのかを考えてみる」
「袖に入った時に比べて舞台上では心拍数が10~20拍/分の差が見られる(バレエの舞台の場合)」

「スポーツにはシーズンとオフシーズンがあるが、芸術の場合はその区分けが明確ではない」

「体力の向上は身体の余裕の保証」
「貯金ならぬ貯筋」→「但し貯金と違うところは、貯筋は継続していないと衰えてゆく」

「抜きで行った稽古でできたことが通しの稽古でもできるとは限らない」→「通しでも最後までパフォーマンスの質を維持できるための持久力が必要」
「レッスンだけでは持久力は向上しない」
「また、プロの場合は活動を継続的に行ってゆくという意味合いでの持久力も求められる」
「持久力の向上は長期的にしか望めない」

「ストレッチをする際に、自分の得意な部位ばかり伸ばす人が多いが、自分の苦手な部位のストレッチを重点的に行うことの方が怪我の予防のためには重要」→「ストレッチはトレーニングなのだという意識を持つ」

「喉が渇いたら、ではなく、喉が渇く前に、水分補給するよう心掛ける」

「積極的休養としてはプールがお薦め」
「筋肉痛は休んで治す」→「特に跳躍の繰り返しや方向転換、急ストップなどの動きは筋肉痛の悪化に繋がり易く、筋肉痛時は極力控えるようにする」

「筋トレは効果が出るまでに1ヶ月」
「持久力は3ヶ月」
「急につけた筋肉は、すぐに落ちる」



今年のセミナーを受けていて、なんとも不思議な感覚となりました。

これは偶然なのか、それとも何か理由があってそういう風になったのか、それは分からないのだけれども、今回参加した3つのプログラム、それぞれが違ったものを扱っているはずなのに、その根底の部分で共通した理念というか思想のようなものが感じられました。
なんというか、もし同じプログラムをそれぞれがくすり箱とは関係のない別々の場でバラバラに行っていたとしたら、今回のような相通じるものを感じたかどうか、、、いや、たぶん感じなかったのではないかなという気がします。

とはいえこれが何を意味するのかは分かりません。
が、今回で7回目のセミナー受講、しかも全ての回に全日参加という皆勤での参加の自分が、初めてこういった感覚になれたということ、それはとても素晴らしいことなのではないかと思います。

もしかすると、講師陣の方々にとっても、参加者の皆様方にとっても、この『芸術家のくすり箱』という活動の理念が深いところで浸透しつつあることの表れであるのかもしれません。

やはり、継続して活動してきていることが、ここにきて実を結びつつあるのかもしれません。


が、それだけに、今がとても大切な時なのだとも思っております。

多くの人々の意識の中に定着してくる、ということは、継続だけを目指してはいられなくなってくる訳ですから(や、もちろんこれまでのくすり箱が継続だけを目的としていた訳ではないということは重々承知の上ですが)、何かしらのプラスαというか、この活動を更新させてゆくというか、そういった考え方が必要となってくるのだと思うのです。

なので自分も、この活動にプラスになるであろうことがもし浮かびましたら提案してゆくつもりですし、また、実際にアクションも起こしてゆきながら可能な限りの尽力を致してゆくつもりです。

という訳で、どうぞ今後ともよろしくお願い致します!


最後に、各プログラム講師の方々及びお手伝い頂きました皆様方、そして会場へお越し下さった全ての参加者の方へ、心より御礼申し上げます。

ありがとうございました!
by syohousen | 2012-06-25 15:32 | レポート(外部受講)
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