壊してからじゃ遅いんだが、、、

よく、普段は発声のことなど全くと言っていいほど関心のなかった人が
日頃の無理が祟ってか、完全に声帯を壊した状態になってから
「本番近いのですがどうしたらいいですか」と聞いてくることがある。

だが、はっきり言ってそれは医者の領分なので、
「病院へ行って下さい」としか言えないのが正直なところだ。

何故なら、ボイストレーナーはあくまでもトレーナーであって
医者ではないため(まあ、結節を発声法の改善によって治すなど、
たしかに代替医療的な側面もあるにはあるのだが)、
声の故障の予防には役立てるのだが、
やはり治療に関しては専門の医者の方が優れている。

まあ、それもそもそもの役割が違うのだから当然といえば当然の話だ。


ただ、それでも負担を最小限に食い止められるような方法を薦めたりして
でき得る限りの対処はするが、所詮付け焼刃でしかないのが実際のところだ。

そもそも声にまつわる故障は、大抵の場合習慣が元になっているので、
一日や二日ではなかなか治るようなものではないし、
その対処法だって芝居が絡んでくればそうそううまくいくとも限らない。

声を気にして作品に影響を与えてしまうことだけは避けねばならない訳だし、
となるとそれら全てをクリアにしてゆくのは相当に骨の折れる作業である。

や、こちらもやれと言われれば最高の結果を出せるよう努力はするけれども、
最終的には当人がそれをやれるかどうかの問題になってくるので、
結局のところ、苦労することになるのは声を壊した当の本人である。


だいたい、100m走の選手が、足を骨折してから
「大会近いのでどうにかして下さい」とトレーナーに相談するだろうか?

そんな相談をしようものなら
まず間違いなく「医者に行け」という返事が返ってくるだろう。

ましてそれが普段から足についてのケアも何もしていない選手であったら、
「知るか、お前の責任だろ」と突っ返されても文句は言えないはずである。


声も商売道具のひとつである以上、
俳優だってそれと大して変わらないはずなのに
何故冒頭に書いたような考えの人が後を断たないのだろうか、、、

たぶん、そこの部分からの意識の持ち方を変えてゆかねば、
日本の演劇界における「声」にまつわる状況は変わってゆかないのかもしれない。

道のりは長そうだが、身近なところから少しずつでも、
声に対しての意識を変えてゆけるよう尽力してゆきたい。
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by syohousen | 2010-08-28 23:03 | 声・身体について
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