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6/12(日)『芸術家のくすり箱 ヘルスケアセミナー vol.6』レポート

2011/6/12(日) 芸術家のくすり箱 ヘルスケアセミナー vol.6 @芸能花伝舎

今回で6回目を迎えた『芸術家のくすり箱ヘルスケアセミナー』。
第1回より参加してきている自分にとってこのセミナーは、毎年定期的に自らの身体の現状を確認し、これまでの自分の生活習慣のどこをどのように改めてゆくとよいのかについてを考えるきっかけづくりの場となっているため、今や自らの活動を続けてゆくにあたって欠かすことのできない心強い存在になってきつつあります。

これはたぶん、単発での参加だけではなかなか実感し難いことなのかなと。
やっぱり継続して参加してゆく中で初めて気付けることというのも沢山あって(特に健康診断と体力測定で)、それを今回はこれまで以上に強く実感したなと、そんな気がしてます。

まあ、それらのことも含めて以下で細かくレポートしてゆきますね。

●10:50~11:10 健康診断

基本的に、すぐに結果が分かるもの(身長・体重や視力など)に関しては昨年から大差はなかったようです。
まあ、左目の視力が(昨)1.5→(今)1.2になっていたり血圧が(昨)両方100以下→(今)上が100越えなど、細かくは変化していたのですが、たぶん誤差の範囲内では収まっていたようで(一昨年の数値に近かったし)特に先生からもこれといったコメントはなし。

ただ、体重や視力に関しては、数値上ではたしかに変化は少なかったものの、どうも「実感」という面ではだいぶ違ってきているようにも感じていたり。
というのも、体重にさほどの変化はなかったものの自分自身で感じる身体の重さは明らかに重くなってきているし、目についても昨年のレポートでも書いていたことなのだけれど日頃から妙に霞むことが多くなったし、今回の視力検査時にもランドルト環の穴の方向は分かったもののその見え方がだいぶぼんやりしてました。

なんというか、上記のように数字には表れない違いのようなものに目を向けることができているのって、もしかすると毎年こうして健康診断を受けてきているからこその気付きなのかもしれない。
なにせ自分の場合、数字の上ではかなり安定して毎年近い数字を叩き出しているのに(過去5年間の結果をグラフにしてみてその安定感にびっくりした)、自分の中での身体感覚は1度として前の年と同じだと感じたことはなかったのだから。
むしろ年々身体感覚の方は落ちてきているように感じていて、それは特に日常を過ごす上で強く実感してる訳です。

という訳で、数値はあくまでも数値であって参考程度の認識で止めておこうかなと思っとります。


●11:15~11:45 体力測定

昨年の測定結果が30代であっただけに今年こそは!という意気込みで臨んだ体力測定。
まあ、結局は意気込みでどうにかなるような問題でないことを思い知らされてしまいました(苦笑)

但し昨年のように満遍なく思うような成果を出し切れなかった訳ではなく、得手不得手のものの数値差が激し過ぎてトータルの点が伸びなかったという違いがあったため、現状を改善するための見通しとしては昨年よりも明確であったなと。

というのも、昨年の結果を踏まえ力を入れて訓練してきた腹筋については10点満点中の9点(30秒で30回)だったりと、しっかりと取り組んできていたものに関しては結果を出せていたので、今度は苦手なポイントの解消を目指し握力と柔軟性を中心に鍛えてゆこうかなと考えてます。
あと、元々大得意であったはずのジャンプ力の方ももうちょい伸ばしたい。


、、、ただ、これは言い訳とかではなく昨年も思ったことなのだけれども、採血直後の握力測定にはやっぱり抵抗があります、、、仮に実際にはさほどの問題がないのだとしても、何かしらのアナウンスが欲しいです。
でないとどうしても採血した側の手で握る際に力を入れることをセーブしてしまいます。
事実、自分は2年連続で左右の握力差が10kg近くありました。

まあ、みんながみんな検診直後に体側を行っている訳ではないのでなかなか難しいのかもしれませんが、スケジュール的にもこの順で受ける人が多くなる可能性は比較的高いと思うので何らかの配慮をお願いしたいです。


●13:00~14:30 ベストパフォーマンスのためのメンタルトレーニング
≪講師≫大場ゆかり先生

今回の各プログラムの中で最も受けてみたかった講座でした。

これまで自分はスポーツ選手を対象としたメンタルトレーニングの書籍はいくつか読んできていたのですが、芸術家のためのメンタルトレーニングについては全く触れたことがなかったのです(というよりも、探しても見付からなかった)。

なのでどのようなことが語られるのか、そして、スポーツ選手のメンタルトレとは何が違うのか、もう興味津々のわくわくした状態で受講に臨んだ訳なのですが、実際に受けてみてどうやらその期待は間違っていなかったようです。
これまでの自らの活動における成功・失敗体験から何を学び取り、何を改めるとより成果を上げられるのかが自分の中で一つひとつ整理されていったとてもいい時間でした。

目から鱗の話やなるほどなーと思うことは沢山あったのですが、自分の中ではやっぱり「普段から、日頃から」という意識が一番重要なのかな、と。
普段できないことが、プレッシャーのかかる大事な場面で急にできるようになるはずもなくて、だからこそ、普段から具体的な現状認識と具体的な発想と具体的な思考を行ってゆけるよう習慣づけてゆくことが大切になってくるのだろうなってことを、この講座で再確認させられました。

【備忘録・印象的な言葉】

「いつもと違う場面でいつも通りの力を発揮」
「あがったことに気付けるか」
「『絶対に~』『~ねば』『みんなが~』『いつもは~』のような実態がぼやけていたり可能性を狭める言葉は避ける」

「メンタルトレーニングの目標は『どうすればよいのかわからない』をなくすこと」→「つまりは『不安』をなくすこと」→「下準備・下調べをしっかりと行うことで、自らの力の及ぶ範囲を知るということ」
「もうひとつの目標は『自ら考え、決断する』能力の獲得」→「『どうすればいいのか』を考え『こうしよう』と決められる」

「『あがり』→制御的処理(考え過ぎ)」
「『パニック』→注意狭窄(思考停止)」

「あがることは悪いことではない」→「程よい緊張が、良質なパフォーマンスを生む(例えば、寝起きでよい結果を出せますか?)」
「よい緊張の度合いは人それぞれだし、訓練によって拡げることもできる」
「頭寒足熱」

「イメージ70% 体力28% 技術2%」
「イメージと生体反応は密接に結び付いている(初めての場所が緊張するのはこのせい?初めての場所はイメージし難いから)」
「イメージによって『実際の行動と同じ身体状態になる』」
「できないことをできるイメージ」→「やる気・自信・セルフイメージの向上」
「ネガティブなイメージへの対処としては、そこから目を背けるのではなく、それを乗り越えるところまでをイメージ上でリハーサルしてみる」
「『想像しないように』は既に想像している(マイナスイメージの定着)」→ならば→「長所を伸ばすイメージを持つ」or「『どうすればいいのか』の方をイメージする」

「目標設定は、難し過ぎても簡単過ぎても逆効果」
「脳は新しい刺激を求める」
「脳は、終わりを意識した途端にその働きを止めてしまう」→なので→「理想は、気が付いたら勝っていた」→ならば→「成功体験を叩き台にして、そこから少しずつハードルを上げてゆくやり方は有効かも(これは横山の私見)」


●14:45~16:15 芸術家のヘルスマネジメント
≪講師:水村真由美先生≫

メンタルトレーニングに続いての講座。
こちらもなかなかに興味深い内容であったなぁと思う。

レッスンとトレーニングを分けて考える、という発想は、もしかすると身体を使った芸術家の間でもあまり浸透していない発想なのかもしれないなと聞いていて感じました。
や、自分の周辺だけに限ったことなのかもしれないのだけれども、そういえばレッスンとトレーニングが限りなくイコールに近い関係として結び付けられているよなと思ったものでして。

でも確かにダンスだけでなく演劇でも稽古だけで本番を乗り切れるだけの体力を作ることはまず不可能だということは明らかだし、実際問題として稽古以外の時間を使って各俳優が自主的に(あくまでも自主的に)走ったりしながら体力づくりを行っているのが現状です。
でもそれも「目の前の公演のために必要なこと」として行っているのが大半で、「トレーニング」として今後も継続して行ってゆく人は若手俳優では少ないような印象、というのが正直なところ、、、

どうもそこら辺の価値観から変えてゆかないことには「ヘルスマネジメント」のスタートラインにも立てることはないのかなぁ、、、と思ってしまいます。
でもそれもこれまでの歴史の積み重ねで現在の状況がある訳なのだから、その歴史や日本という国の社会構造的なものをしっかりと踏まえた上で考えていかなきゃなとも思ったり。

まあ、とにかくまずは自分の習慣から変えてゆこうかなと。そこからですね。

【備忘録・印象的な言葉】

「芸術家の身体はスポーツ選手同様、普通の人以上に体調を崩したり怪我をしたりする可能性が高く、しかもそれが選手生命にも関わってしまう」
「健康は『適度』な運動を定期的に行うことが重要」→「しかし芸術家は不定期なスケジュールの上にその運動も過度な強度が要求され、また更にメンタル的な部分でも負担は大きい」→「健康を維持しようとするには不確定要素が多過ぎる」
「加齢に伴う身体能力の変遷は、30歳がピークで以降年1%ずつ下降してゆく」
「体力は急には落ちない」→なので→「早めの対処が大切」

「WHO(世界保健機構)の定義によると『健康とは身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない』とある」
「“Health”に換えて“Wellness(個人のポテンシャルを最大限発揮できる状態)”という概念」→「日常から健康を考える」→「価値観を変える」
「ライフスタイルを変えるには本人の意思が必要」→「つまり健康の重要性を理解することが重要」

「積極的休養:軽い運動によって疲れを取る」
「テーパリング:本番へ日が近付くごとに練習量を減らし、パフォーマンスを向上させる」

「身体に怪我の要因がないか→トレーニングの改善」
「生活に不調の要因がないか→ライフスタイルの改善」

「クラシックバレエの基礎レッスンだけでは持久力は向上しない」→「しかし舞台上での運動強度はバスケット並みに高い」→「普段の練習だけでは舞台での体力はつかない」


■16:30~18:00 チューブトレーニング
≪講師:山本利春先生≫

今回のセミナーで唯一参加したWSでした。

チューブトレは野球選手や格闘技の選手がやっているのをテレビか何かでよく見かけてて、見る度にいいなーやってみたいなーって思っていたので、今回のこのセミナーのプログラムに組み込まれていてとても有り難かったです。

実際にやってみて、このチューブっていくらでも応用可能だから使えば使うほど色んなトレーニング方法を試すことができて飽きないなーて感じました。
また、さほど場所もとらず持ち運びも便利だし怪我の可能性も非常に少ないのも魅力ですね。

WS中、講師の山本さんが仰っていた「トレーニングは、回数を増やすことよりもその運動の強度を高める方が効果をあげ易い」「100回もできてしまう運動より、10回でへとへとになるような運動の方が効果はある」という発想でトレーニングをしようとする場合、このチューブトレは非常に有効だなと思います(まあ、だからチューブトレなのでしょうけれども)。

ただ、自分にとっては何よりも遊ぶ感覚でトレーニングが行えるのが素敵なんです。
暇な時にでもさっと取り出して、どっかに引っ掛けて色々とやれるので。

今後も色々と試してみますわ。


●18:15~19:30 パネルディスカッション
≪堤淳さん、西原正成先生、瀬尾理利子先生、水村真由美先生≫

ヘルスケア助成対象者である堤さんの復帰までの過程を、堤さんご本人の体験談も交えつつ担当なさった先生方より紹介して頂きました。

話を聞いていて感じたことは、あの場で語られていたことというのは堤さん個人が持つ特殊な境遇による問題なのではなく、今の舞台芸術界の底辺でうっすらと横たわっている問題なのではないのか、ということでした。
決して他人事なのではないな、ということです。

それだけに、あの場でのやり取りを、もっともっと多くの方達に見て頂きたかったし、知って頂きたい。

大きな怪我をしてしまったらもうお終いで自然とフェードアウトしてゆくのを待つだけなんて、あまりにも救いのない話です。
金銭的にも社会的にも何の保証もない中で、でも我が身を削って自らの信じる道を突き進んでいる人の末路としてはあまりにも寂しいじゃないですか。

それも自分で選んだ道なのだから仕方ない、という意見が分からないでもありません。
しかし、それが救いのない環境のままでいいという理由にはならないと思います。

どうしたらこの取り組みがより広まってゆけるのか、自分も我が事として動いてゆきたいなと思っております。

【備忘録・印象的な言葉】

西原「スポーツ選手でもそうなんだけど、うまい人ってのはトリックモーションで苦手な動作を補えてしまうため、後々になってその皺寄せがきてしまう」

西原「トレーニングの一番のメリットは、競技寿命の延命。パフォーマンスの質の向上のためでもあるけど、長く続けるためにトレーニングは必須」
堤「レッスン以外のトレーニング的なことは、自己流の、しかも学校の部活でやっているような筋トレ程度のことしかやってこなかった」

堤「専門家の方について頂いてトレーニングを行うようになってからは、パフォーマンス中に身体のどこが使えていてどこが使えていないのかが具体的に実感できるようになり、一つひとつのパフォーマンスが積み重なってゆくようになった」
堤「レッスン≠トレーニングということがこの怪我によって、この助成を受けることによって分かった」

西原「これが一般のクライアントの方だったら痛みのない、無理のない範囲でリハビリに取り組んでいったが、堤さんの場合は復帰を目指している以上、痛みとも向き合ってゆかねばならなかった。そのため、堤さんとのコミュニケーションをどれだけしっかりと取ることができるのかがとても重要なことだと考えていた」
西原「トレーナーと医療従事者とで連携が取れることがこの助成の強み」
瀬尾「くすり箱の活動理念をしっかりと理解した上での関わり方だからこそ、長期的見地に立った判断が下せた」

堤「怪我する前からくすり箱の活動は知っていた。しかしその必要性は分かっていても動かなかったのは事実だし、怪我したからこそその必要性を実感できているとも言えるのが正直なところ」
堤「ヘルスケア助成を受けた事によって、周囲の人達が興味を持ってくれるようにはなってきたけれども、それでもなかなか実際に動いてくれるまではいかない」
堤「ただ、若い人はまだ『動こうかな』という意思が少なからず感じられる。逆にベテランは自己流へのこだわりが強い」
堤「金銭面が参加へのブレーキになっているのは事実。しかしこれは“かけていいお金”だと思う」

西原「海外ではレッスンだけでなくトレーニングにも力を入れている。日本はケアには力を入れているし好まれているけど、トレーニングに目を向ける習慣はほとんど根付いていない」




今年のセミナー、自分は講座中心での参加であったものの、例年通りに、いや、例年以上に有意義な時間を過ごすことができたなと思っております。
セミナーそのものの内容的にも、これまでの積み重ねもあって年々充実したものとなっているなと感じますしね。

が、同時に、6回も参加しているとなると色々と「こうしてみたら」というものも見えてくるもので、全てが最高の素晴らしい時間だった!とはいかないのも事実です。
回を重ねてきたからこそ見えずらくなってきてしまっているものもあるでしょうから。

それについては今後提案だったり実際に動いてみたりしながら、自分も可能な限り尽力してゆきたいなと思っておりますので、どうぞこれからもよろしくお願い致します。


最後に、講師の皆様方、当日ボランティアとして参加下さった方々、そして何よりご来場下さりました全ての方へ心より御礼申し上げます!

ありがとうございました!
by syohousen | 2011-06-19 22:27 | レポート(外部受講)
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